今週の気になる? Vol.414
第414回 【 「万引き家族」が提起した問題 】
編集部:「今週の気になる?」のコーナーは?
横尾 : カンヌでグランプリを受賞した映画「万引き家族」を観ました。
是枝裕和監督とリリー・フランキーほか出演者の息が合って、
見ごたえがありました。
編集部: どんなストーリーなのですか?
横尾 : 東京の下町に住む5人家族のもとに、
ネグレクトにあった少女がやってきて、
それぞれ5人の過去が明らかになっていく話です。
編集部: おもしろいところはどこでしょうか?
横尾 : 出演者のセリフが短く、ボソボソ話し、
説明がないところがとてもよいです。
北野武監督の映画もそうですが、説明が多すぎる映画はダメです。
もちろん小説も同様ですが。
編集部: 万引き、など犯罪を素材にした事で意見が出ているそうですが?
横尾 : フィクション、映画や文学も犯罪を素材として描くことは
たくさんあります。
勧善懲悪がドラマだと思うとそれは間違いです。
映画を見たり、本を読む人が、映画で語られた世界、
また描かれていない背後を想像し、自分の中でどう考えるのか、
それが芸術の根本だと思います。
つまり表面上のストーリーだけではないということです。
編集部: そうですね。
横尾 : 最近表面だけを見て、いろいろな言説が飛び交いますが、
事の本質を見極めることが反知性主義の時代にあって、
とても大切なことだと思います。
その点「万引き家族」は家族の絆、
低所得者層の実態などという薄っぺらなことではなく、
人間が生きるということの本質をとらえていると思います。
by weekly-yokoo | 2018-08-01 09:38 | 今週の気になる?