週刊!横尾和博
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今週の気になる? Vol.404

    第404回 【 平成文学論 第2回 】

編集部:「今週の気になる?」のコーナーは?

横尾 : 先週に続いて「平成文学論」の続きです。

編集部: お願いします。

横尾 : 先週は、「大災害」と「テロ・戦争」という2つのキーワード、
     1995(平成7)年の阪神・淡路大震災、
     2011(平成23)年3・11東日本大震災。
     そして2000年代(平成12年)に入りニューヨークでの
     9・11のテロからアフガン戦争、イラク戦争、
     そしてISによる欧州をはじめとしたテロ活動を挙げて、
     文学との関係を考えてみました。

編集部: その続きですね。

横尾 : はい、先週はディストピア、「壊れる」というキーワードを文学の
     特徴として述べました。
     今回は平成を考える上で欠かせない「バブル崩壊」「規制緩和と格差」
     「グローバル」「非正規雇用」「失われた25年」「ネット社会」
     という経済や社会現象から文学を捉えたいと思います。

編集部: こう見ると30年間、色々な事がありましたね。
     パソコン、携帯、スマホなど情報通信分野が画期的に伸びました。

横尾 : はい、文学ではネット文学が登場しました。
     本などの紙媒体はますます苦境になっていますね。
     そこが出版事情の大きなポイントです。

編集部: あとは経済的な問題のようですが?

横尾 : やはりバブル経済の崩壊、1991年からの景気の大幅後退は、
     もはや高度経済成長はムリで、資本主義は低成長期に入った事を思わせました。

編集部: これが文学にも影響を?

横尾 : はい、平成世代にデビューした若手の作家は
     背景としての経済停滞期の宿命を有形無形に負っているような気がします。

編集部: たとえばどのような作家でしょうか?

横尾 : まずブームとして小林多喜二『蟹工船』のリバイバルがありました。
     2008年ころです。
     NPOが派遣労働の人たちにスポットをあてた日比谷公園での
     年越し派遣村が社会問題化したころです。
     作品でいうと若手ではありませんが桐野夏生の「メタボラ」、
     2006年に芥川賞受賞した伊藤たかみの「八月の路上に捨てる」などが
     若者の屈託も含めて、停滞や破壊をよく表現していると思います。
     いまの30歳代前半から40歳代前半にかけて、非正規雇用など
     社会的要因で鬱屈する「失われた世代の文学」といっても過言ではありません。

編集部: ほかに平成文学の特徴とは何でしょうか?

横尾 : やはりグローバル化ということですね。
     日本人作家が他の言語圏で活躍することで、ドイツの多和田葉子などです。
     逆に楊 逸(ヤン イー)のように、中国人が日本語で書いて
     芥川賞を受賞したケースもあります。

編集部: 時代の流れとは無関係に芸術だけを追い求める作家もいるかと思いますが。

横尾 : 文学では社会事象とは別に、個の世界を守っている作家がいます。
     私小説を書く西村賢太、自己と他者・世界との関係を
     拒否する村田沙耶香などです。
     あと1970年代に内向の世代として登場した古井由吉などは、
     独自の老いの世界を深めていて出色ですね。
     かなり大雑把なくくりですが、
     こうしてみると平成文学の特徴が鮮明だと思います。
     文学のこれからを考えていく上で、とても重要だと思います。


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  by weekly-yokoo | 2018-05-23 09:01 | 今週の気になる? | Comments(0)

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