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週刊!横尾和博
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今週の気になる? Vol.293

    第293回 【震災文学特集③村田喜代子『焼野まで』】

編集部:「震災文学」の3回目です。

横尾 :はい、3・11から5年経って、文学表現での大震災を検証していますが、
    今回は村田喜代子『焼野まで』(朝日新聞出版)をとりあげます。

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編集部:どのような内容なのですか?

横尾 :著者の私小説として読むことも可能で、2013年の震災後、子宮ガンを
    告知され、その治療のために鹿児島県にある放射線治療センターに通院する
    女性の話です。
    近くのウィークリーマンションを借りて、火山の噴火や、かつての同僚との
    人間模様を描きながら、自らの魂の遍歴を描いていきます。

編集部:作家自身の経験なのですね?

横尾 :はい、そうです。
    村田喜代子は以前にも短篇で「光線」を発表し、3・11の原発事故と
    自分の体を突き抜ける放射線の光を二重写しにしています。

編集部:つまり放射能(線)から、社会問題と病気と個人の問題をダブルイメージで…


横尾 :はい、社会の壊滅と個人の病という滅亡を、完成度高い小説として描いて
    います。
    背後の風景や火山の爆発の荒れた情景もよく表現されています。

編集部:大所や高所から原発を書くのではなく、自分の身の回りからですね。

横尾 :そうです。
    自分の等身大、身の回りのことを描く「私(わたくし)小説」の極致とも
    言うべき3・11震災文学だと思います。

 

  by weekly-yokoo | 2016-03-16 11:08 | 今週の気になる?

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