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週刊!横尾和博
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今週の気になる? Vol.216

              第216回 【「茶色の朝」ってどんな朝?】

編集部: さて今週の気になるは?

横尾 : きょうは本の紹介です。
      『茶色の朝』というフランク・パブロフというフランスの物理学者が
      書いた寓話です。
      1998年に出版され、日本では2003年に訳されました。
      日本語版は絵もついて美しい装丁ですが、中身は怖い話です。

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編集部: どんな話ですか?

横尾 : 主人公の「俺」は友達のシャルリーと、ビールを飲みながらトランプをしたり、
      ビストロで食事をしたりパスティス(フランス産リキュール)を飲んだり、
      飼っているペットの自慢をし合ったりして毎日を楽しんでいます。
      しかし、最近では飼うペットの色は茶色でなければなりません。
      以前は黒や白の犬や猫がいたのですが。

編集部: なぜでしょうか?

横尾 : ペットだけではなく、そのうちに新聞や出版社、ラジオなど、
      社会全体が茶色になっていきます。
      仕方がなく「俺」もシャルリーも、茶色のペットを飼いました。
      しかしある日シャルリーが逮捕されました。
      いまは茶色のペットを飼っていますが、前に黒い犬を飼っていた罪です。
      ある朝、「俺」の家のドアをノックする音が聞こえます。
      世界は茶色一色になっていました。

編集部: それは不気味ですね。茶色の意味とは何でしょうか?

横尾 : ファシズムの色の象徴です。
      ナチスの制服のイメージです。

編集部: 日常の中でだんだんと、政治体制や考え方が一色に染まっていく例え話ですね。

横尾 : 本書の解説で哲学者の高橋哲哉は、「考えつづけること」、「思考停止に陥らないこと」
      を強調しています。
      いまの時代、まさに「茶色」が勃興し、これから新聞や出版社など、
      茶色以外を許さない時代の入り口にきています。
      考えつづけること、思考停止に陥らないことを肝に銘じたいですね。
      いろいろな色彩があってこそ世界は良い、ということを強調したいです。

  by weekly-yokoo | 2014-09-03 11:54 | 今週の気になる?

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