今週の気になる? Vol.21
第21回 【いま話題の白熱教室とは?】
編集部: さて今週の気になるですが。
横尾 : 今年ハーバード大学のマイケル・サンデル教授の本
『これからの「正義」の話をしよう』が、
ベストセラーになりました。
また彼が大学で学生を相手にディスカッションしながら
講義を進めていく「白熱教室」も話題になり、
『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業』
という2巻本も売れています。
NHK教育テレビでもその様子が連続して放送されました。
編集部: 人気の背景にはなにがあるのでしょうか?
横尾 : 先々週の「もしドラ」(『もし高校野球の
女子マネージャーがドラッガーの
「マネジメント」を読んだら』)を紹介した際にも
少し触れましたが、世の中が混迷して、
未来への希望が見いだせないときに「正義」という
考え方の本質をもう一度考え直してみたい、
という潜在的な欲求が
人々の心の中にあるのではないでしょうか。
編集部: 正義の考え方を見直すと?
横尾 : そうです。
現代は「善と悪」という対立する2つの概念が単純化され過ぎていますね。
昔、ボクらの子ども時代は、「月光仮面対どくろ仮面」という2つの対立する
善悪がハッキリしていました。古いですけどね(笑い)。
「仮面ライダー対ショッカー」、「水戸黄門対越後屋・悪家老」でも
いんですが(笑い)。まあマンガやドラマでもハッキリしていました。
でも現代社会では起きる事件や事象をあまりにも単純化し、
一方を悪者扱いし過ぎて、新聞やテレビで皆で叩けば、
それでコトが足りるような社会になってしまいました。
それに警鐘を鳴らし、正義という概念はそんな単純なものじゃないよ、
というのがこの本の趣旨だとお考えいただければ…。
編集部: 確かに改めて正義とは何か、と問われると考えてしまいますね。
横尾 : 時代が進むにつれて善と悪は、そんなにハッキリとした対立概念ではない
ということがわかってきたのではないでしょうか。
19世紀後半から世界思想になった人権、富の平等、福祉などの理念や
概念が、20世紀後半から優勝劣敗、勝ち組負け組の「新自由主義」の
考え方が復権したことで、より正義の概念が大きく揺すぶられているんですね。
編集部: 日本でいえば構造改革、小泉・竹中路線ですね。
横尾 : 日本は2001年に小泉さんが登場してきたあたりから優勝劣敗の思想は
自己責任ということばと裏腹に登場しました。
このような一見分かりやすい図式的な二元的な考え方が危険なのですね。
昔は西部劇では騎兵隊が善、「インディアン」(先住民族)が
悪とされてきました。いまはそれを信じている人はいませんね。
ところがアメリカではいまでも西欧世界は善、イスラムは悪だとの
単純な二元法でイラク戦争やアフガン戦争をやっています。
人間社会の営みに善悪は確信犯的な殺人、窃盗などをのぞいてはそんなに
単純に割り切れるものでもないんですね。
編集部: だからこそ「正義」を見直して、浅い考え方ではなく深く哲学として
考えようというのがサンデル先生のモチベーションなのですね。
横尾 : そのとおりです。
正義とは時代や置かれた個々の状況の中では判断基軸が異なり、
絶対的な概念ではなく相対的な概念ではないか、ということですね。
それに従って善悪の単純二元論もマンガやドラマの世界では通用しますが、
世界を認識したり理解する方法としてはあまりにも単純で危険です。
メディアやネットなども善悪二元論に傾いていますが、
リテラシー(読み解き能力)を私たち自身持つことが課題となります。
そんなことを考えさせられる一冊です。
編集部: サンデル先生のからの質問を何か紹介してください。
横尾 : では『これからの「正義」の話をしよう』から1問。
「1人を殺せば5人が助かる状況があったとしたら、
あなたはその1人を殺すべきか?」、さあどうでしょうか?考えてみてください。
哲学の問いですから「正解」はありません(笑い)。
深く考えることが重要です。
編集部: さて今週の気になるですが。
横尾 : 今年ハーバード大学のマイケル・サンデル教授の本
『これからの「正義」の話をしよう』が、
ベストセラーになりました。
また彼が大学で学生を相手にディスカッションしながら
講義を進めていく「白熱教室」も話題になり、
『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業』
という2巻本も売れています。
NHK教育テレビでもその様子が連続して放送されました。
編集部: 人気の背景にはなにがあるのでしょうか?
横尾 : 先々週の「もしドラ」(『もし高校野球の
女子マネージャーがドラッガーの
「マネジメント」を読んだら』)を紹介した際にも
少し触れましたが、世の中が混迷して、
未来への希望が見いだせないときに「正義」という
考え方の本質をもう一度考え直してみたい、
という潜在的な欲求が
人々の心の中にあるのではないでしょうか。
編集部: 正義の考え方を見直すと?
横尾 : そうです。
現代は「善と悪」という対立する2つの概念が単純化され過ぎていますね。
昔、ボクらの子ども時代は、「月光仮面対どくろ仮面」という2つの対立する
善悪がハッキリしていました。古いですけどね(笑い)。
「仮面ライダー対ショッカー」、「水戸黄門対越後屋・悪家老」でも
いんですが(笑い)。まあマンガやドラマでもハッキリしていました。
でも現代社会では起きる事件や事象をあまりにも単純化し、
一方を悪者扱いし過ぎて、新聞やテレビで皆で叩けば、
それでコトが足りるような社会になってしまいました。
それに警鐘を鳴らし、正義という概念はそんな単純なものじゃないよ、
というのがこの本の趣旨だとお考えいただければ…。
編集部: 確かに改めて正義とは何か、と問われると考えてしまいますね。
横尾 : 時代が進むにつれて善と悪は、そんなにハッキリとした対立概念ではない
ということがわかってきたのではないでしょうか。
19世紀後半から世界思想になった人権、富の平等、福祉などの理念や
概念が、20世紀後半から優勝劣敗、勝ち組負け組の「新自由主義」の
考え方が復権したことで、より正義の概念が大きく揺すぶられているんですね。
編集部: 日本でいえば構造改革、小泉・竹中路線ですね。
横尾 : 日本は2001年に小泉さんが登場してきたあたりから優勝劣敗の思想は
自己責任ということばと裏腹に登場しました。
このような一見分かりやすい図式的な二元的な考え方が危険なのですね。
昔は西部劇では騎兵隊が善、「インディアン」(先住民族)が
悪とされてきました。いまはそれを信じている人はいませんね。
ところがアメリカではいまでも西欧世界は善、イスラムは悪だとの
単純な二元法でイラク戦争やアフガン戦争をやっています。
人間社会の営みに善悪は確信犯的な殺人、窃盗などをのぞいてはそんなに
単純に割り切れるものでもないんですね。
編集部: だからこそ「正義」を見直して、浅い考え方ではなく深く哲学として
考えようというのがサンデル先生のモチベーションなのですね。
横尾 : そのとおりです。
正義とは時代や置かれた個々の状況の中では判断基軸が異なり、
絶対的な概念ではなく相対的な概念ではないか、ということですね。
それに従って善悪の単純二元論もマンガやドラマの世界では通用しますが、
世界を認識したり理解する方法としてはあまりにも単純で危険です。
メディアやネットなども善悪二元論に傾いていますが、
リテラシー(読み解き能力)を私たち自身持つことが課題となります。
そんなことを考えさせられる一冊です。
編集部: サンデル先生のからの質問を何か紹介してください。
横尾 : では『これからの「正義」の話をしよう』から1問。
「1人を殺せば5人が助かる状況があったとしたら、
あなたはその1人を殺すべきか?」、さあどうでしょうか?考えてみてください。
哲学の問いですから「正解」はありません(笑い)。
深く考えることが重要です。
by weekly-yokoo | 2010-11-17 10:44 | 今週の気になる?