週刊!横尾和博
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第21回  【いまや少数意見だがあえて言う、「愛国無罪」は許されない!】

      第21回  【いまや少数意見だがあえて言う、「愛国無罪」は許されない!】


編集部: 尖閣列島沖の中国漁船衝突ビデオが流出した事件での波紋がまだ収まりません。

横尾 : 43歳の海保職員(海上保安官)が「自分がやった」と自供して事情聴取が
      続いています。

編集部: なぜ逮捕、立件されないのですか?

横尾 : 刑法でいう秘密の暴露にあたるかどうかで慎重捜査が続いています。
      だから「事情聴取」が長引いているんです。
      背景にはAPECで中国の胡錦涛国家主席が来日していた事と、
      この海保職員を応援する声があるからです。

編集部: 横尾さんはどのようにお考えですか?

横尾 : 私は情報テロだと思っています。
      自衛隊(軍隊)、警察、そして海上保安庁は武器を持つ公務員の中では
      規律をまもらなければいけない重要な職業です。
      時の政権が気にいらない、意に沿わないからといって情報流出を起こすのは
      クーデターに匹敵します。

編集部: 海保職員を断固処分しろ、と?

横尾 : 法にのっとって処分をすればよいだけです。
      ここで世論に押されて寛大な措置をすると後悔することになります。
      戦前でも軍部が官邸に乗り込み、犬養首相を暗殺した5・15事件では、
      むしろ犯人が英雄扱いになり寛大な処分になりました。
      それが2・26事件のクーデターにつながったんです。
      また日本だけではありません。よその国家でも「愛国的な行動」は無罪であり、
      有罪にはならずに「寛大な措置」に落ち着くケースがあります。
      中国でも数年前、反日デモで暴力的な行動があり商店が破壊された事件が
      ありましたが、「愛国無罪」というスローガンを掲げていました。
      つまり中国では「反日」は愛国的な行動なので法を破っても無罪、
      ということをデモ参加者が言っていました。

編集部: 「愛国」というスローガンはどこの国でも国民を燃え上がらせると?

横尾 : そうです。特に経済状況が悪く閉塞感漂う社会では燃え上がります。
      いまの日本でもメディアを中心とする時代風潮は、
      流出ビデオを隠したほうが悪い、だから公開させた海保職員は
      国民の意思を反映させた英雄だという空気があります。

編集部: 時代の空気に流されるな、ということですね。

横尾 : 朝日新聞の11月12日朝刊の論壇で佐藤優(元外務省職員、評論家)さんも
      語っていますが、流出させた海保職員に甘い措置をとればこれから次々と
      「武器を握る公務員」による反乱が起きる可能性があります。
      愛国無罪ということで、処分できなくなります。
      そうするとシビリアンコントロール(文民統制)がますます効かなくなり
      軍部台頭、ファシズム国家(強い国家)への危険が生まれます。

編集部: 歴史の教訓は生かさなければいけませんね。

横尾 : 戦前新聞メディアは、戦争を賛美し煽りました。
      国民も歓呼で軍部の海外進出を讃えました。
      歴史を繰り返しては、戦争のために死んだ300万人の日本国民に
      申し訳ありません。
      時代の空気や雰囲気に流されないで、皆と違う意見を言うには勇気がいります。
      戦前では反戦を言った人は牢獄に入れられ、過酷な拷問で獄死した人もいます。
      いま少数意見を言うのは勇気がいりますが自衛隊、警察、海上保安庁など
      武器を持つ公務員にしっかりとした統制をはからなければなりません。
      それには歴史、国際(外交)、経済など基本的な今の世界を
      理解する教育(研修)しかないと思っています。

編集部: しかし菅政権の外交には多くの疑問があります。

横尾 : いまの政権は確かに外交問題でオタオタしています。
      私も外交問題では政権に批判的です。
      だからと言って、武器を持つ公務員の「愛国無罪」の論調には組みしません。
      この海保職員は今後、海保を辞めた後「愛国派」に持てはやされて、
      評論家などとしてメディアや講演などで自分の主張を発信することでしょうが、
      それをメディアは持ち上げないでほしいと思います。
      真の愛国とは、国民が豊かに安心して暮らせるために諸外国といかにうまく付き合うか、
      巧みな駆け引きを考え、実行することだと思います。

編集部: APEC開催中ということもあって、政府も対応に大変なんでしょうが、
      規律という問題を考えると、キチンと処分して欲しいものですね。
      本日もありがとうございました。

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  # by weekly-yokoo | 2010-11-17 10:52 | バックナンバー

今週の気になる? Vol.21

        第21回  【いま話題の白熱教室とは?】

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編集部: さて今週の気になるですが。

横尾 : 今年ハーバード大学のマイケル・サンデル教授の本
      『これからの「正義」の話をしよう』が、
      ベストセラーになりました。
      また彼が大学で学生を相手にディスカッションしながら
      講義を進めていく「白熱教室」も話題になり、
      『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業』
      という2巻本も売れています。
      NHK教育テレビでもその様子が連続して放送されました。

編集部: 人気の背景にはなにがあるのでしょうか?
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横尾 : 先々週の「もしドラ」(『もし高校野球の
      女子マネージャーがドラッガーの
      「マネジメント」を読んだら』)を紹介した際にも
      少し触れましたが、世の中が混迷して、
      未来への希望が見いだせないときに「正義」という
      考え方の本質をもう一度考え直してみたい、
      という潜在的な欲求が
      人々の心の中にあるのではないでしょうか。

編集部: 正義の考え方を見直すと?

横尾 : そうです。
      現代は「善と悪」という対立する2つの概念が単純化され過ぎていますね。
      昔、ボクらの子ども時代は、「月光仮面対どくろ仮面」という2つの対立する
      善悪がハッキリしていました。古いですけどね(笑い)。
      「仮面ライダー対ショッカー」、「水戸黄門対越後屋・悪家老」でも
      いんですが(笑い)。まあマンガやドラマでもハッキリしていました。
      でも現代社会では起きる事件や事象をあまりにも単純化し、
      一方を悪者扱いし過ぎて、新聞やテレビで皆で叩けば、
      それでコトが足りるような社会になってしまいました。
      それに警鐘を鳴らし、正義という概念はそんな単純なものじゃないよ、
      というのがこの本の趣旨だとお考えいただければ…。


編集部: 確かに改めて正義とは何か、と問われると考えてしまいますね。

横尾 : 時代が進むにつれて善と悪は、そんなにハッキリとした対立概念ではない
      ということがわかってきたのではないでしょうか。
      19世紀後半から世界思想になった人権、富の平等、福祉などの理念や
      概念が、20世紀後半から優勝劣敗、勝ち組負け組の「新自由主義」の
      考え方が復権したことで、より正義の概念が大きく揺すぶられているんですね。

編集部: 日本でいえば構造改革、小泉・竹中路線ですね。

横尾 : 日本は2001年に小泉さんが登場してきたあたりから優勝劣敗の思想は
      自己責任ということばと裏腹に登場しました。
      このような一見分かりやすい図式的な二元的な考え方が危険なのですね。
      昔は西部劇では騎兵隊が善、「インディアン」(先住民族)が
      悪とされてきました。いまはそれを信じている人はいませんね。
      ところがアメリカではいまでも西欧世界は善、イスラムは悪だとの
      単純な二元法でイラク戦争やアフガン戦争をやっています。
      人間社会の営みに善悪は確信犯的な殺人、窃盗などをのぞいてはそんなに
      単純に割り切れるものでもないんですね。

編集部: だからこそ「正義」を見直して、浅い考え方ではなく深く哲学として
      考えようというのがサンデル先生のモチベーションなのですね。


横尾 : そのとおりです。
      正義とは時代や置かれた個々の状況の中では判断基軸が異なり、
      絶対的な概念ではなく相対的な概念ではないか、ということですね。
      それに従って善悪の単純二元論もマンガやドラマの世界では通用しますが、
      世界を認識したり理解する方法としてはあまりにも単純で危険です。
      メディアやネットなども善悪二元論に傾いていますが、
      リテラシー(読み解き能力)を私たち自身持つことが課題となります。
      そんなことを考えさせられる一冊です。

編集部: サンデル先生のからの質問を何か紹介してください。

横尾 : では『これからの「正義」の話をしよう』から1問。
      「1人を殺せば5人が助かる状況があったとしたら、
      あなたはその1人を殺すべきか?」、さあどうでしょうか?考えてみてください。
      哲学の問いですから「正解」はありません(笑い)。
      深く考えることが重要です。
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  # by weekly-yokoo | 2010-11-17 10:44 | 今週の気になる?

編集後記 Vol.21

ハリーポッターがついに最終章公開~!ん?Part1?最終章でPart1って!!
いつの頃からでしょうか?
エンターティメントの世界に露骨にビジネスの匂いがしても気にしなくなったのは?
いつの頃からでしょうか?
おとぎ話に大人の影がちらついても見ぬふりできるようになったのは?
大脱走とか、スティングとか、昔、いい映画はそれで完結してるところが男前だったのになぁ。
ジョーズ2とか、ロッキー2あたりから映画がおかしくなった気がします。
細かく例をあげ出すと、あまりにも繁雑になりすぎるので、あえてピンポイントの例を出しましたが、
だいたいそんな感じじゃないですか?
まぁ、ハリーポッターの場合、原作本からしてかなりの引っ張り感があったので、
映画がどんだけ引っ張っても不思議じゃないですけど、
こういうのが当たり前になっていることが嫌ですね。
テレビドラマでも、映画まで結論を引っ張ったりとか・・・そういう小手先の手法をとることは決して
将来的に得な事じゃないとわかっていてもやらざるを得ない業界事情というか、
現代の世の中のお仕事スタイル事情が余計な閉塞感を作っているんですよ~!
社名とかキャッチコピーばかり、夢だの愛だの言ってないで、内容で夢と愛を示して頂かないと、
本当に夢も愛も忘れた世界になってしまいますよ!聞いてる?!
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  # by weekly-yokoo | 2010-11-17 10:31 | 編集後記

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