今週の気になる? Vol.403
第403回 【 「平成文学」とは何か? 】
編集部:「今週の気になる?」のコーナーは?
横尾 : 来年の4月30日で「平成」が終わります。
新しい年号は来年2月ころ発表といわれていますが、
後世の為に今から「平成文学」とは何だったのか、考え方を示しておきます。
編集部: お願いいたします。
横尾 : まずは「大災害」と「テロ・戦争」という2つのキーワードが浮かんできます。
1995(平成7)年の阪神・淡路大震災、想定外の阪神での地震。
都市型地震で火事と生き埋めで、6千名以上が犠牲になりました。
それと2011(平成23)年3・11、大津波と原発事故ですね。
編集部: 2つの地震で新しい文学が生まれたのでしょうか?
横尾 : 阪神・淡路では村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』
という短編集がでました。
数多くの作品は生まれませんでしたが、心の奥底に響く作品でしたね。
3・11はいまだに作品は生まれつつあり、
おそらく単行本にして数十冊は、震災関連の小説や詩、評論が生まれています。
編集部: それは原発事故の影響が大きいのでしょうか?
横尾 : もちろんそうですね。
津波、原発、物語の故郷である東北などいくつかの要素があるかと思います。
阪神の場合は直接、首都圏の作家も含めて人々が経験していません。
編集部: 「テロや戦争の時代」とのキーワードはいかがでしょうか?
横尾 : 2000年代(平成12年)に入りニューヨークでの
9・11のテロからアフガン戦争、イラク戦争、
そしてISによる欧州をはじめとしたテロ活動は
社会全体を不安にしました。
編集部: 日本の文学にも影響を?
横尾 : イラク戦争が始まった2003(平成15)年3月の東京での
若者の日常を描いた岡田利規『三月の5日間』という名作があります。
編集部: 時代の流れは文学作品にも色濃く反映されるのですね。
横尾 : 現実社会の動きは常に作家たちに有形無形で影響をあたえます。
もちろん私小説や芸術史上主義の作家たちは、
世の動きとは無関係に自分の書きたいテーマを追っていきますけど。
でも平成文学の特徴は「災害とテロ・戦争」をきっかけに、
いままでとは違う「ディストピア小説」を多く生み出したことです。
桐野夏生『バラカ』、吉村萬壱『ボラード病』などです。
編集部: ディストピアというと?
横尾 : 破滅的未来のことですね。
これは明治以降の近代文学にはない、平成文学の特徴だと思います。
編集部: それはおもしろい切り口ですね。
横尾 : いずれまたゆっくりお話をします。
きょうはまずさわりだけ(笑)。
平成文学の特徴である「壊れる」というキーワード、
その他の文学作品の動きも含めてお話しします。
by weekly-yokoo | 2018-05-16 09:01 | 今週の気になる?