週刊!横尾和博
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今週の気になる? Vol.373

  第373回 【カズオ・イシグロにノーベル文学賞!】

編集部:さて「今週の気になる」です。

横尾 :先週発表のあったノーベル文学賞の話題です。

編集部:カズオ・イシグロは日系イギリス人とのことですね。

横尾 :カズオ・イシグロの両親は日本人で子どもの頃、
    学者の父親の研究のため渡英して、
    イギリスで教育を受けたのですね。
    1983年にイギリスに帰化していますから、「英国人」というわけです。
    もっとも文学には「日本人」とか「イギリス人」とか国籍は関係ないですね。
    文学作品の中身の勝負ですから。

編集部:今回の授賞は意外だったのですか?

横尾 :ブックーメーカ(賭け屋)の予想では、ケニア出身のグギ・ワ・ジオンゴ 、
    そして村上春樹の順番でした。

編集部:昨年はボブ・ディランでしたね。何か賞特有の基準や特徴があるのですか?

横尾 :よくわかりませんが最近選ばれた人では、社会派的な作家、
    社会に作品上で物申すような作家が選ばれているようです。
    「ノーベル」というダイナマイトを作った人の名を冠した賞ですから。
    逆に唯美主義的な作家は敬遠されがちですが、1968年には日本の川端康成が
    選ばれて、彼は唯芸術主義の作家で社会参加型ではありません。
    その時々の選考委員の考えもあるのでしょう。

編集部:今回のカズオ・イシグロの作風とは?

横尾 :日本で有名なのは『わたしを離さないで』です。
    テレビドラマで綾瀬はるかが主演しました。
    クローンを素材にした物語で、
    生命倫理や深い生の哲学を考えさせられる名作です。
    映画にもなっていますね。

編集部:そうですか。

横尾 :また2年前の2015年には『忘れられた巨人』が翻訳されています。
    老夫婦が謎の霧が覆う世界で、息子を探す旅に出る物語で、
    荒野をさまよう夫婦に困難が次々と襲います。
    イングランドが舞台で、時代はアーサー王伝説が支配する6、7世紀です。
    ファンタジー仕立てで、キーワードは「忘れてしまう記憶」なんですね。
    記憶が戻った時、人はどの様に現実に立ち向かうのか、という優れた寓話です。

編集部:歴史物のファンタジー仕立てで、『わたしを離さないで』が
    未来の話とすれば、逆なんですね。

横尾 :はい、そうです。
    授賞理由を「偉大な感性を持った小説によって、
    世界とつながっているという幻想に潜んだ深淵を明らかにした」
    とアカデミーが言っています。
    クローン、記憶の忘却などの題材は社会派でありながら、
    物語性や感性に訴えた芸術性豊かな作品群、ということだと思います。

編集部:出版社では大増刷ということですが。

横尾 :早川書房が版権を持っていて、これから増刷がかかり手に入りやすくなります。
    一読をお勧めします。


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  by weekly-yokoo | 2017-10-11 10:50 | 今週の気になる? | Comments(0)

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